急性痛と慢性痛の対処

捻挫、打撲、肉離れなどの外傷に伴う急性痛

ケガ(捻挫、打撲、肉離れ(挫傷))の特徴の一つは組織の損傷が起こる事です。炎症や痛みを引き起こす化学物質が損傷部位から放出され、ズキズキとした急性痛が発生します。この場合、生物医学的(症状は病気や障害が原因で起こるといった考え)な対処が優先されます。

当院の外傷への対処として、固定を行い患部を安静にさせ、物理療法などを利用して組織の修復を促します。通常、組織が修復するにしたがって「急性痛」は治まっていきます。受傷直後から24時間~72時間は内出血、腫脹、痛みといった反応が進行します。 これらがあまりにも急速に進行しないように、保護、安静、冷却、圧迫、挙上(PRICE処置)を行います。

ケガの際の急性痛はからだの異変を知らせるシグナルです。私たちにケガの場所を知らせ、むやみに動かさないようにさせています。この場合の痛みは負傷部位を再び損傷しないようにするため、身体の安静を保ち創傷の治癒を促すための意味のある反応です。組織が再生するまではなるべく負傷部位に負担をかけない工夫が必要です。※こちらもチェック→末梢性感作


また、すでに組織が修復していたり特定の原因が無いにも関わらず、痛みが長引く(3か月~6か月以上)場合の痛みは「慢性痛」と呼ばれます。

腰痛や肩こりに伴う慢性痛

慢性痛の痛みには意味が無いと言われます。急性痛のように、損傷を知らせるような役割がありません。例えるなら警報装置が誤作動を起こしている状況です。

では、放っておいても良いのかというと、そうではありません。痛みというネガティブな経験は脳に記憶され身心に好ましくない影響を与える可能性があります。

慢性痛は急性痛の対処とはまったく異なります。長く続く痛みは不安、不眠、抑うつ、意欲の低下など、生物医学的な側面だけでなく、より心理的・精神的な苦痛が問題となり、生活の質、日常生活動作に影響します。

当院では特に慢性痛に対して筋肉や関節といった組織を徒手でどう変えるかよりも、徒手アプローチを介して脳を含む神経系がどう変化するかを考えています。
※こちらもチェック→偏桃体と痛み 中枢性感作 バイオサイコソーシャル 神経系