中枢性感作(Central Sensitization)

中枢性感作は「中枢神経系の侵害受容ニューロンの、通常または閾値以下の求心性入力に対する反応性の増加」と説明されています。引用:IASP(国際疼痛学会HP)https://www.iasp-pain.org/

中枢性感作は中枢神経(脳・脊髄)が過剰に興奮した状況です。例えば中枢神経が過剰に興奮していると「少し押しただけで痛む」「触っただけで痛い」など、通常では「痛み」とは感じないような刺激に対してでも痛みを感じてしまう刺激の過敏性が出現します。中枢性感作を引き起こす身体の仕組みとしてシナプス長期増強やワインドアップ現象が知られています。

シナプス長期増強(LTP)
シナプス長期増強はシナプス前細胞に頻回の刺激を加えると、シナプス前細胞とシナプス後細胞がシナプスを介して信号伝達する能力が高まる現象をいいます(シナプスの可塑性)。痛みを伴う刺激が繰り返されると脊髄後角(1次ニューロンと2次ニューロンの間)に長期増強がおきます。例えば、漢字を覚えるために何度も書きとりをしていると漢字を覚えることができるのと同じように、痛みも脊髄が記憶し、そのうち痛みを感じるのが「得意」になってしまいます。その結果、「いつまでたっても痛む」といった状況を作ります。シナプス長期増強の仕組みは元々は、記憶や学習のメカニズムとして海馬や小脳の細胞で研究されていたそうですが、現在では痛みを伝える経路のシナプスでもシナプス長期増強が起こる事が分かっています。

ワインドアップ現象
強い刺激が何度も繰り返し入力されると、脊髄後角にある広作動域ニューロンの放電時間が延長し、興奮性が急速に増大、持続する性質を言います。つまり、強い刺激を繰り返し受けると、徐々に痛みを強く感じるようになります。

まとめ
痛みを我慢する事が「良い事」のように考えられる場合がありますが、身体にこのような仕組みがある事を知ると、強い痛みを我慢することのデメリットも見えてきます。また「繰り返し経験する痛み刺激」が中枢性感作に結び付く事を考えると強い刺激や痛みを伴う施術、毎日のボディケアに注意する必要があることが分かります。
「痛みに敏感に反応する身体」にしてしまわないように身体に入れる刺激については気を付けたいですね。