トリガーポイント

トリガーポイントとは
1843年にRobert Froriepというベルリンの内科医が筋肉中に索状に触れる過敏点の存在を報告しました。それが今日のトリガーポイントだと考えられています。その後、1983年にTravellとSimonsが筋筋膜性疼痛症候群として(MPS)トリガーポイントの概念を『Travell & Simons’ Myofascial Pain and Dysfunction: The Trigger Point Manual (筋筋膜性疼痛と機能障害: トリガーポイントマニュアル)』にて発表しました。トリガーポイントは圧迫をすると関連領域に関連痛を引き起こす部位のことです。このトリガーポイントは単なる圧痛点ではなく、関連痛を引き起こす部位であるとされています。半世紀以上前の概念ではありますが、今でも多くのセラピストがこのトリガーポイントの概念にのっとって、トリガーポイントと呼ばれる場所に手や鍼を使って施術を行っています。

トリガーポイントの概念への批判的な評価があります
「外的妥当性には欠けていますが、多くの医療従事者はMPS(筋筋膜性疼痛症候群)の診断とその治療体系を無批判に受け入れています。」「これは臨床現象自体の存在を否定するものではなく、既知の神経生理学的現象に基づいて科学的に健全で理論的に妥当な説明を進めることができます。」「科学文献は、MPSの特徴的な特徴(Trp)の診断が信頼できないことを示しているだけでなく、推定上のTrpに対する治療がプラセボ効果と区別できない反応を引き起こすことも示しています。」「Trpが既知の末梢神経に顕著に近接していることに注目し、おそらく炎症による神経内の軸索の感作が、根底にあるメカニズムを知らせる可能性があると主張した。この仮説を裏付けるその後の研究が明かになりました。」引用:A critical evaluation of the trigger point phenomenon/John L Quintner , Geoffrey M Bove, Milton L Cohen

つまり、トリガーポイント現象と呼ばれているものは炎症による末梢神経の感作により起こる二次的な現象の可能性があります。さらに、加えて…

神経幹神経(Nervi Nervorum)
「神経の神経」と呼ばれる神経幹神経の存在をご存知でしょうか。これは末梢神経に分布している神経です。末梢神経は多くの膜に覆われているのですが、それらの膜に神経幹神経が分布しています。神経の圧迫や絞扼、損傷や炎症などの情報を受け取ると興奮し、その情報を脊髄や脳に送ります。神経幹神経は侵害刺激や圧力に特に敏感に反応します。

「圧迫による神経根のダメージは神経根部の循環に影響し、その結果起こる虚血が炎症や浮腫の原因となる。」「この炎症は神経の結合組織を支配する神経 nervi nervorum からも起こりうる。」「この神経叢は侵害受容機能があり、関係する神経に沿って主たる神経の全長にわたり痛みと感覚に影響する。」引用:熊澤孝朗/臨床痛み学テキスト/エンタプライズ出版部

神経の炎症が神経の走行に沿った痛みに関係すること。また、神経の血管などにも分布する神経幹神経から炎症が起こる可能性があります。そしてトリガーポイントの関連痛領域と神経の走行を見比べてみると、それらは重なっているように見えます。


まとめ
トリガーポイント現象は中枢性感作や末梢性感作が関わっていると思われます。筋肉に発生するという索状硬結も侵害刺激に続く防御反応として起こる筋スパズムの可能性を考えることができます。これらから、アプローチに痛みが伴うような侵害刺激を加えると一時的に筋が弛緩することは考えられますが、結果的に防御反応による筋収縮を増やし、さらに筋肉は硬くなることが考えられます。