自律神経の働きが固定されたら大変だという話

突然ですが、いつも一緒じゃないと困るものってありませんか?例えば、靴や服のサイズが毎日変わったらとても不便だと思います。身体のサイズは変わらないのに、昨日はSサイズで、夜の間に大きくなって今日は3Lサイズになっている…。昨日はピチピチで、今日はガバガバのシャツで出勤しないといけないなんて嫌ですよね。いつもちょうど良い、決まったサイズを着たいものです。

さて、今回は自律神経のお話です。自律神経には交感神経と副交感神経があり、よくアクセルとブレーキのような表現で説明されています。交感神経は「闘争か逃走」といった主にエネルギーを消費する時のためのモード、副交感神経は「身体を休息させ、次の活動の準備をする」といった主に身体を休ませて、エネルギーを貯めるためのモードです。実はこの身体のシステムは一方に偏ったままだったり、常に同じ状態に固定されたりすると困ったことになってしまいます。先ほどの話に付け加えると、自律神経はその時の体の大きさや状況を感知して、自動でサイズや素材、機能が変化する服のようなものだと思います。もしもそんな服があれば便利ですね!

つまり、常に身体の内外の環境を感知してそれに応じて変化していないといけないのが自律神経です。例えば100メートル走をする時の心臓の働きが安静時と比べて変化しないようなことがあれば、たちまち健康な状態を害してしまいます。しかし走る時には交感神経が優位に働いてガス交換や心臓の収縮力を高め血圧や心拍数を上げ、交感神経と逆の作用をする副交感神経の働きを抑制することでその状況に適応できています。このようにそもそも体の状況に合わせて一時的に偏ったりすることもあるのですが、もしもどちらか一方の働きだけになったり、働きが全くなくなると身体の重要な機能が正常に働かなくなります。

身体にあるほとんどの血管は交感神経が支配しています。
血管の平滑筋(内臓や血管に存在する意識的に制御できない筋肉)は交感神経が働くと収縮し血管の直径を細くすることができます。これらの血管の状態を身体の状況に合わせて交感神経が強く働いたり、弱く働いたりすることで細くしたり、太くしたりしてコントロールしています。交感神経が全く働かなくなるとしたら血管が過剰に拡張し、血圧が低くなりすぎて重要な臓器に血液が運ばれなくなります。

結局のところ自律神経は常に身体の状況に合わせて変動し、バランスを取ることで健康を維持しています。
「一発で自律神経が整う方法!」みたいなキャッチコピーも、解釈によっては恐怖でしかないのです(笑)。

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