近年、痛みについての研究が進む中で、「ペインマトリックス(Pain Matrix)」
という言葉が知られるようになりました。
ペインマトリックスとは、痛みを感じているときに反応しやすい
脳の領域の集まりを説明するために使われてきた言葉です。
ただし、この言葉は少し誤解されやすい面があります。
「脳に痛み専用の場所がある」
「そこが反応しているから、痛みの原因は脳にある」
「痛みは全部、脳の問題である」
という意味ではありません。
この記事では、ペインマトリックスとは何か、そして痛みを考えるうえで
神経系をどのように捉えればよいのかを、できるだけ分かりやすくお伝えします。
ペインマトリックスとは?
ペインマトリックスとは、痛みを感じているときに
反応しやすい脳の領域の集まりを表す言葉です。
痛みの研究では、痛み刺激を受けたときに、
島皮質
前帯状皮質
視床
体性感覚野
など、複数の脳領域が反応することが報告されてきました。
こうした反応のパターンが、痛みに関わる脳のネットワークとして
「ペインマトリックス」と呼ばれてきました。
fMRIで見えているものについて
ペインマトリックスの研究では、fMRIなどの脳画像検査が使われることがあります。
fMRIは、神経活動そのものを直接写しているわけではありません。
脳の血流や、血液中の酸素状態の変化を手がかりにして、
脳の働きを間接的に推測する方法です。
そのため、画像上である場所に反応が見られたとしても、
「そこが痛みを作っている場所です」
「そこが痛み専用の場所です」
と単純に決めつけることはできません。
もちろん、fMRIが意味のない検査というわけではありません。
脳の働きを調べるための大切な方法のひとつです。
ただし、画像に映る反応はあくまで間接的な情報であり、
その意味は慎重に考える必要があります。
「痛みを感じるための場所」という意味ではありません
ペインマトリックスは、痛みだけを感じる特別な場所という意味ではありません。
これらの脳領域は、痛みだけでなく、
強い音
驚き
不安
注意を向ける反応
身を守ろうとする反応
などにも関わることがあります。
つまり、ペインマトリックスは、
「痛みのスイッチ」というより、
「体にとって重要そうな情報に反応し、注意や防御反応に関わるネットワーク」
として考えた方がよさそうです。
それでも、痛みは神経系を抜きにして説明できません
ペインマトリックスという考え方を慎重に扱うことと、
痛みに神経系が関係しないということは、まったく別の話です。
痛みは、脳を含む神経系を抜きにして説明できないものです。
皮膚、筋肉、関節、神経などから入ってくる感覚情報は、
脊髄や脳を含む神経系で受け取られ、処理され、統合されます。
そして、その人の経験、不安、注意、疲労、睡眠、生活環境
などとも関わりながら、痛みという体験として現れることがあります。
これは「気のせい」という意味ではありません。
体からの情報と、脳を含む神経系の働きが関係しながら、
痛みという体験が生じているという意味です。
痛みは、ひとつの原因だけで説明できません
痛みについて考えるとき、
「骨がずれているから」
「筋肉が硬いから」
「姿勢が悪いから」
「脳の誤作動だから」
と、ひとつの原因だけで説明したくなることがあります。
しかし、痛みはそれほど単純ではありません。
組織への負担が関係することもあります。
炎症や損傷が関係することもあります。
神経の敏感さが関係することもあります。
不安、疲労、睡眠、過去の痛みの経験、
動くことへの警戒が関係することもあります。
また、痛みの背景に病気や炎症などが隠れている場合もあるため、
必要に応じて医療機関での検査や判断も大切です。
慢性痛では、神経系の反応も大切な視点になります
長引く痛みでは、最初のきっかけとなった組織の問題だけでは
説明しきれないことがあります。
痛みが長く続くと、体が過度に身構えやすくなったり、
動きへの不安が強くなったり、
神経系が刺激に敏感に反応しやすくなることがあります。
このような状態では、強い刺激で無理に変えようとするよりも、
体が「必要以上に守らなくてもよい」と感じやすい入力を
重ねていくことが大切だと当院では考えています。
当院の考え方
あんのん接骨院では、痛みをひとつの原因だけで決めつけず、
どのような動きで痛みや不安が出やすいのか
どのような刺激で体が身構えやすいのか
日常生活でどのような負担が続いているのか
医療機関での確認が必要な状態ではないか
を確認しながら施術を進めています。
当院では、
関節・筋膜・皮膚などへのやさしい刺激を通して、
神経系の働きに配慮した施術
を大切にしています。
強い刺激で無理に変えようとするのではなく、
体が回復に向かおうとする変化を妨げないよう、
負担の少ない形で進めていきます。
ペインマトリックスという言葉は、痛みを「痛い場所だけ」
の問題として考えないためのきっかけになります。
ただし、それは「痛みは全部脳の問題」という意味ではありません。
痛みは、体からの感覚情報を、脳を含む神経系が受け取り、
処理し、統合し、反応として出力しているものです。
当院では、医療機関での検査や判断も大切にしながら、
体と神経系の両方に目を向け、負担の少ないやさしい施術を通して、
回復に向かう変化のきっかけを丁寧につくっていきます。
引用:痛みを理解しよう‐10分でわかる痛みの対処法(Japanisch)/Deutsches Kinderschmerzzentrum/www.youtube.com/@deutscheskinderschmerzzent1105/著作権 ボリス ツェアニコフ、ミュンスター

