前回の「ストレス反応(SAM軸)」でもお話いたしましたが、人はストレスを受けると2つの様式の反応が起こることが知られています。SAM軸とHPA軸と呼ばれる反応です。今回はHPA軸(系)を中心としたお話をしたいと思います。
HPA軸(視床下部-下垂体-副腎皮質軸)は内分泌系を介したストレス反応です。ストレス(痛み・冷たさ・心配・不安・恐怖など)を受けるとその環境の変化に対処するべくHPA軸と呼ばれるストレス反応が活性化されます。
ストレスが加わると視床下部から放出されるホルモンにより、下垂体からホルモンが放出され、今度はその下垂体から放出されたホルモンが副腎皮質に働きかけ、結果的に副腎皮質からコルチゾールというホルモンが分泌されます。
上記のような連動する機能が身体にはあり、ストレスに対応しようとします。以下はコルチゾールの主な生理作用です。
①肝臓での糖新生を促して血糖値を上昇させます。
②抗炎症・免疫を抑制させる作用があります。
③タンパク質代謝(タンパク質(筋肉)を分解してアミノ酸を血中に放出)
④脂肪組織での脂肪の代謝(脂肪を分解しグリセリンと脂肪酸を血中に放出)※分解されて肝臓に集まったグリセリンとアミノ酸は新たにグルコース(ブドウ糖)を作る材料にされます。
筋肉も分解するし、脂肪も分解するのがコルチゾールですが、これに加えて骨にカルシウムが沈着するのを阻害してしまう可能性があります。つまり骨量もコルチゾールと関連します。当然、体にとって必要な反応ではあります。しかし、このようにコルチゾールの生理作用を見てみますと、身体を分解(破壊)する方向に変化させる反応の印象ですね。
短い間のストレスなら、一時的な変化が身体に起こるだけで問題が無いのですがやはり長期間ストレスが加わり続けるとこのストレス反応が身体に様々な問題を起こしはじめます。自覚する症状としては疲労感や脱力感、倦怠感、不眠、不安、いらいらしやすくなる、集中力がなくなる、手足の冷えや頭痛、また、風邪をはじめ感染症にかかりやすくなったりします。
また、最近の研究では記憶と関連の深い脳の「海馬」という部分の変性を促してしまうなんてことも分かってきています。ストレスが脳の大切な部分に影響しているなんて無視できない問題です。個人差や生活環境により、ストレスの影響は様々だとは思いますが、できることならストレスによる悪影響を減らしたいですよね。
ところで「オキシトシン」というホルモンを分泌させると過剰に分泌されるこの「コルチゾール」を減少させることが分かっています。オキシトシンは人を優しい気持ちにさせたり、幸せな気持ちになる時に分泌されています。
誰かに親切にした時にも分泌されますし、家族とのスキンシップや可愛い動物と触れ合ったりした時にも分泌されます。そしてなんと言ってもやさしい徒手療法を受けることでもオキシトシンの分泌を期待することができます!
皮膚の上にはCT線維という「無害・心地よい」感覚だけに反応する神経線維があります。お母さんが子供の背中を優しく撫でる時にはこのCT線維が反応していると考えられます。その結果、鎮痛効果を期待することができたり、ストレスによる反応を少なくしたり、副腎皮質からのコルチゾールの分泌を抑制してくれたりします。さらに恐怖や不安を減少させてくれたりもします。
先ほどのCT線維は「無害で心地よい」刺激にしか反応しないという特徴があります。あんのん接骨院の自費施術では「ストレス反応」を活性化させるような痛い刺激や不快な刺激をなるべく加えないように注意を払っています。
やさしい施術、無害で心地よい施術でCT線維が沢山反応してくれると、痛みだけではなく、コルチゾールの分泌量も減らしてくれるはずです。神経科学に基づく新しい徒手療法で日頃のストレスをケアしませんか?